身内から糖尿病患者が出たりしてその脅威を身近に感じていると、次第にブドウ糖そのものに嫌なイメージを持ち始めませんか?
私は完全に糖質に対して恐れのような感情を持っちゃってます。
本来は大切な栄養素なのですが、血中のブドウ糖が引き起こす害について調べていると、どうしても摂取に忌避感を抱いてしまうんですよね。
今回説明する「糖毒性」も、そうした高い血糖値によって引き起こされる恐ろしい現象の一つです。一言で言えば、加速度的に糖尿病を悪化させる負のスパイラルですね。
この記事ではそんな「糖毒性」について、
- どういう現象でどんな仕組みなのか?
- それを治療するための方法はあるのか?
といったことを解説していきます。
「糖毒性」とは?どんな現象でどんな仕組みなのか?
タンパク質の「糖化」によるダメージ
「糖毒性」を理解するためには、そもそもなぜ血糖値が高くなると危険なのかについて知っておく必要があります。
以前解説したことがありますが、ブドウ糖にはタンパク質と結びつく働きがあります。これを糖化といいます。
タンパク質が糖化すると、AGEという物質になります。
このAGEは、いわゆる老化物質なんです。
医学的に細かいことを抜きにして簡単にいえば、AGEによって細胞が老化してしまうと考えてください。
細胞が老化すれば、その細胞の様々な機能に問題が発生します。
ということは、細胞からなる臓器にも問題が発生するわけです。
目の毛細血管がボロボロになって視力低下や網膜剥離を引き起こしたり、腎臓にダメージを与えて腎障害を生じさせたり、様々な悪影響が糖化によって起こるのですね。
血糖値が高くなると危険な理由は、血管内でこの「糖化」が発生してしまうからだといえます。
すい臓へのダメージと負のスパイラル
糖化によるダメージは様々な臓器に悪影響を及ぼしますが、いちばん問題なのはすい臓へのダメージです。
すい臓は血糖値をコントロールすためのインスリンを分泌する臓器ですから、ここがダメージを受けてインスリン分泌能力が低下すると、血糖値は一気に悪化します。
この悪化した血糖値が、さらに膵臓のインスリン分泌機能を破壊して高血糖を誘発するのです。
これを「糖毒性」といいます。
まさに一旦発症すると加速度的に糖尿病が悪化していく負のスパイラルですね。
負のスパイラルが恐ろしいのは、一旦それに嵌ってしまうと、生半可なことでは抜け出せないからです。
普通の人なら適度な運動で抑えられる程度の糖質摂取量であっても、この糖毒性に陥っている人の場合は、血糖値が上がったまま下がらなくなります。インスリンを出す機能そのものが弱っているからです。
同じ量の炭水化物を食べても、糖尿病の進行状況によって血糖値上昇幅に違いが出てくるのはこれが理由なんですね。
一旦糖尿病になると悪化する一方だと言われるのは、この糖毒性が治療を困難にしていくからだともいえます。
糖毒性を治療するための方法とは?
糖毒性による負のスパイラルから脱却するためには、どうすればいいのでしょうか。
シンプルに考えれば、完全に膵臓が破壊されてインスリン分泌機能がなくなる前に、高血糖状態を解消するのが第一ですね。
そこで現在行われているのが、比較的早期にインスリン注射によって血糖値を下げる治療法です。
インスリン注射は手間もかかるし重症患者が行う治療法だと思われがちですが、いちばん強力な治療法であることは否定できません。
そこで糖毒性から脱却するために、あえて早い時期にインスリン注射で血糖値を下げます。これにより膵臓のインスリン分泌機能が破壊される前に高血糖状態を解消できるので、その後の治療の効果が飛躍的に高まるのです。
糖毒性から脱却して治療効果が高くなれば、以後はインスリン注射を打たなくても投薬や食事療法、運動療法で血糖値を適正な状態に管理できます。
つまり、糖毒性を放置するよりも遥かに少ない負担で血糖値管理ができるのです。
最初だけ我慢すれば後々楽になるってことですね。
おわりに
- 糖毒性とは、高血糖によってすい臓のインスリン分泌機能が破壊されてさらなる高血糖を引き起こす悪循環現象
- 治療するためには早期のインスリン注射で悪循環を断つことが重要
糖尿病は様々な合併症を引き起こしますが、それはこういう様々な負のスパイラルが体内で起こっているからなんですね。
病気や人体の精妙な仕組みには本当に感心してしまいます。
しかし仕組みがわかれば対策も取れるわけで、医学って凄いなとこちらもまた感心してしまいましたね。
それにしても、早期のインスリン注射にこのような意味があるのなら、医師からインスリン注射を勧められても「そんなに深刻なのか……」と悩む必要はなさそうですね。糖毒性の解消が目的ならば、インスリン注射は一時的なものにすぎないかもしれないわけですから。
回復の可能性があるなら、いちいち絶望するだけ時間の無駄ですねw
そう考えると気が楽になると思います。
逆に言えば、こういう絶望感を持ってしまうのは、最近の早期インスリン注射による治療を知らず、「注射を始めたらあとは死ぬまでそれが続くだけ」と思い込んでいるからなんですよね。
ある意味糖尿病への誤解に起因する社会的「偏見」が問題なわけです。
日本は現在世界有数の糖尿病大国なのですから、もっとこの病気に対する正確な情報を社会へ向けて発信する必要がありますね。