現代ほど健康に気を使っている人の多い時代はないと断言できるほど、世の中には様々な健康食品やサプリメントが溢れかえっています。
食事に含まれている栄養素はことごとく表示され、不足している栄養素をピンポイントで補給することも簡単にできるようになりました。
こうした流れの中で最近注目を集めているのが、粉末状の代替食品です。
粉末状の代替食品とは?
これは要するに、豊富な栄養素を含んだ食品を手軽に摂取できるように粉末状にしたものですね。
たとえば、大量の野菜を食べるのはたいへんでも、同量の栄養を含んだ粉末にしてしまえば、食べやすさは格段に上がります。すると食事の時間を大幅に短縮できるので、忙しい人にピッタリだというわけです。
しかも粉末状の代替食材は、通常のサプリメントと異なり、食品に含まれるすべての栄養素を丸ごと凝縮しているので、より自然な栄養状態が実現できるわけです。
粉末状代替食品の問題とは?
こうした発想で作られた健康食品やダイエット用代替食品を最近は頻繁に目にします。
しかし、こうした食品を毎食のように食事代わりにしていると、逆に健康状態が悪化する可能性が示唆されました。
これはマウスを使った実験ですが、同じ栄養の食事であっても、粉末状にして与えたマウスと通常の食品として与えたマウスでは、粉末状にして与えたマウスのほうが血糖値が高く不健康だったそうです。
これは3週間後の間ずっと粉末状の食事を与えた結果です。
さらに、その食事を17週間継続したところ、マウスは血糖値の他に血圧やストレスホルモンの値も上昇していたのだとか。
この研究からわかることは、咀嚼がいかに大きな影響を血糖値に与えているかということです。
よく噛むことの重要性
以前書いたように、咀嚼回数が多いほど血液中のGLP-1というホルモンの濃度が高まります。このホルモンはインスリンの分泌を促進するので、血糖値は上がりにくくなり、糖尿病リスクが減少するのです。
参照:咀嚼と血糖値の関係:食事で噛む回数が多いほど糖尿病になりにくい?
よく噛んで食べることが血糖値に与える影響は、私たちの想像以上に大きいということですね。ひょっとしたら歯が無くなると長生きできない、なんて話も咀嚼回数が少なくなることと関係しているのかもしれません。
さて、「よく噛んで食べること」はこれほど重要だとすると、サプリメントや粉末状の代替食品の問題点もまた明らかですね。
サプリメントや粉末状の代替食品は栄養こそ豊富ですが、咀嚼回数が少なくなってしまいがちなので、毎食利用するべきではないということです。
サプリメントは栄養補助食品
もちろん、このマウスを使った実験は、3週間以上の長期間粉末食品だけを食べさせるという極端な環境での結果です。人間ならば考えにくいような環境下での実験だといえます。
それに人間に対する実験ではないので、はっきりしたエビデンスがある結論というわけではありません。
メカニズムとしては十分にありそうなことですから、この結果自体はきちんと受け止めるべきでしょうが、だからといってサプリメントや代替食品をすぐに止めろというわけではないのです。
そもそもサプリメントや代替食品は、食品の代わりとして恒常的に食べられることを想定したものではないでしょう。サプリメントは栄養補助食品ですし、粉末状の代替食品も同様です。せいぜい3食のうち1食を置き換える程度のものなので、そこまで悪影響が出るとも思えません。
「こうした食品はあくまでも健康維持のための栄養補助だと考えて利用するべきであり、完全にそれしか食べないのは止めたほうがいい。」
このように考えて生活するべきだということですね。