インスリンは膵臓のβ細胞から分泌され、筋肉への糖の取り込みや糖新生の抑制などに関係しつつ、血液中のグルコースの濃度を一定に保つ働きをしています。
そのため、インスリンは食後に血糖値が上がった時だけ分泌されるのではなく、24時間常に一定の量が放出されています。
この血糖値を一定に保つために常に分泌されている分を、インスリンの「基礎分泌」と呼びます。
これに対し、食事に含まれる糖質によって一時的に血糖値が上昇したとき、その余剰分を処理するために分泌される分を、インスリンの「追加分泌」と呼びます。
追加分泌は通常、基礎分泌の5倍から10倍、人によってはそれ以上のインスリンを放出することになります。
1型糖尿病の人はβ細胞自体が破壊されているため、基礎分泌すらされていません。インスリンは生命維持にも関係してくる重要なホルモンですから、インスリン療法が発明されるまで1型糖尿病患者の多くが命を失っていたのも当然の結果なのです。
これに対し、2型糖尿病の人は必ずしもインスリン療法を行わなくても生命に直接影響はありません。それは2型糖尿病の人の多くが、基礎分泌についてなら比較的問題が少ないからなのです。
言い換えれば、2型糖尿病の人の多くは、インスリンの追加分泌の量やタイミングに問題があるため、血糖値が下がらないわけです。
2型糖尿病の人に糖質制限食が有効な理由はここにあります。
すなわち、摂取する糖質自体を少なくすることで、機能に問題があるインスリンの追加分泌を回避することができるからこそ、糖質制限食が有効なわけです。
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